1.
おそらく京都の小学校では、
誰もが習うであろう、数え歌がある。
丸竹夷二押御池、
(まるたけえびすにおしおいけ)
姉三六角蛸錦、
(あねさんろっかくたこにしき)
四綾仏高松万五条。
(しあやぶったかまつまんごじょう)
これすべて京都を東西に走る通りの名前である。
まだ続きはあるのだが、
丸太町通りに始まり、四条通り、五条通りと続く。
京都の中心部において人通りが密集するのは、
三条〜四条を中心とするエリアである。
そんな京都の街にあって、
くずし割烹 「枝魯枝魯 ひとしな 」が位置するのは、
松原通りを少し南に行ったところだ。
数え歌で言うところの、
四綾仏高『松』万五条、である。
何が言いたいかと言えば、
近辺に住んでいる人はともかく、
そうそう松原まで足を伸ばす人はいないということ。
「お目当て」がない限り、である。
電話も接客ですよね
2008年1月10日、
この日はいつも以上に店内が騒がしい。
前日が枝魯枝魯の福利厚生で休みだったためか、
仕込み中の昼下がりの店内では、
何やかんやと、電話がひっきりなしに鳴っていた。
その電話のほとんどに応対するのが、
枝國栄一本人である。
取材を申し込んだ際、
本人が出たのは偶然かと思ったが、
そういうわけではなかったようだ。
「まーくん!
ブッキングの調整、何とかつきそう。」
目の前で電話を終えた枝國が、
階下のスタッフに声を張り上げる。
仕込み中の店内は、
揚げ物の油のはじける音や、
包丁の刻む音などが幾重にも重なり合い、
活気にあふれる。
目を閉じれば、目の前に並んだのでは味わうことのできない、
食の音色をいくつも聞き分けることができる。
今思い返すと、そんなことを感じるのだが、
その時は、繰り返し枝國本人が電話に出続けることに、
ただただ感心した。
「僕にかかってくる電話が多いこともあるんですけど、
電話も接客ですよね。」
枝國は軽くそう口にしたが、
それを本心として電話に出続ける店長はそうはいないだろう。
オープン3ヶ月は誰も来なかった
今でこそ、枝魯枝魯のカウンターは、
連日リピーターをはじめとする、
枝魯枝魯を「お目当て」とする客で溢れ返るものの、
顧客を持たない状況でオープンした当時は、
3ヶ月間、全く人が入らなかったという。
それを見かねてか、
お店の設計・デザインを担当したデザイナーが、
友人のメディア関係者やデザイナー・クリエイターに
次々と紹介してくれたのだという。
やがて、枝魯枝魯はメディアに取り上げられるようになり、
オープンから一年経った頃には、
逆に予約が取れない店へと姿を変えることになった。
「それで、おかしくなったんやと思います。」
「店が混むようになると、
知らずのうちに、努力を怠るようになる。」
「『味』も『独創性』も『コストパフォーマンス』も。
すべてがも落ちたと思いました。」
もちろん、
本人が気付かないわけはなく、
懸命に修正に取り組んだというが、
自分の取り組み以上に、
「文句言うてでも来てくれるお客さまのおかげ」で、
持ち直すことができたと枝國は振り返る。
voice inside vol.4 【枝國編】 (2008/5/7 - 2008/6/7予定)
『くずし割烹 枝魯枝魯 』枝國 栄一
1. >> 電話も接客ですよね (2008/5/7)
2. >> 毎日がフルマラソン (2008/5/15)
3. >> 「食べるということに諦めている」 (2008/5/22)
4. >> お店ってわざわざ来るところ(2008/5/29 )
5. >> GiroGiro から Guilo Guilo へ(2008/6/6 )
voice inside vol.4 【枝魯枝魯編】 (2008/6月中旬 公開予定)
『GuiloGuilo Cuisine Japonaise 』 枝國 栄一
『くずし割烹 枝魯枝魯 ひとしな 』 松本 吉弘